【書評レビュー】井上達夫編『法と哲学 創刊第1号』

法と哲学を架橋する論文誌の創刊号。法哲学・実定法学の研究者から若手、実務家までを対象とする論文集

最終更新日:2018年3月15日

現代法哲学会の第一人者である東京大学の井上達夫氏が責任編集を勤める論稿集の創刊号です。

井上達夫編『法と哲学 創刊第1号』信山社、2015年

私の評価 ★★★★☆
ページ数 232頁
著者・編者 井上達夫責任編集、著者:長谷部恭男、河上正二、松原芳博、児玉聡、宇野重規、松元雅和、網谷壮介、瀧川裕英、森村進、早川誠
出版社 信山社
出版年 2015年6月30日
出版社ページ 信山社 書籍詳細ページ
目次

はしがき
特集 〈法における哲学〉と〈哲学における法〉
1 法と哲学―「面白き学知」の発展のために― 〔井上達夫:東京大学教授(法哲学)〕
2 憲法と哲学 〔長谷部恭男:早稲田大学教授(憲法学)〕
3 民法と哲学 〔河上正二:東京大学教授(民法学)〕
4 刑法と哲学―刑罰の正当化根拠をめぐって―〔松原芳博:早稲田大学教授:刑法学〕
5 法と倫理学 〔児玉 聡:京都大学准教授(倫理学)〕
6 法と政治哲学―「三つの分離」を超えて―〔宇野重規:東京大学教授(政治思想史・政治哲学)〕

論説
1 兵士の道徳的平等性に関する一考察 〔松元雅和:関西大学准教授(政治哲学)〕
2 カントと許容法則の挑戦―どうでもよいこと・例外・暫定性―〔網谷壮介:東京大学博士課程〕
3 死と国家―政治的責務論の存在論的転回―〔瀧川裕英:立教大学教授(法哲学)〕

書評
『立法学のフロンティア』(全3巻)ナカニシヤ出版,2014年
1 法理論における立法の意義 〔森村 進:一橋大学教授(法哲学)〕
2 熟議は立法府を救えるか? ―『立法学のフロンティア』と政治哲学との間で―〔早川 誠:立正大学教授(現代政治理論)〕

価格 3,024円

現代法哲学会の第一人者である東京大学の井上達夫氏が責任編集を勤める論稿集の創刊号です。
題名を法哲学ではなく「法と哲学」としたところに大きな意味が込められており、法に関わる人、哲学に関わる人、双方から「法と哲学」についてアプローチをする試みです。
寄稿者も研究者に限らず、法曹など実務者からも広く受け入れています。
巻末に「投稿規定」がありますが、条件は書かれていません。論文原稿にも著者の氏名等は記載しない、とありますから、純粋に内容だけで掲載の可否を判断するようです。

創刊号の著者のうち、森村進は日本におけるリバタリアンの第一人者。
瀧川裕英は立教大学の教授で、法哲学から現実的な問題をみる。エボラ出血熱とグローバルな正義、児童手当は独身者差別か?、ベーシック・インカム、国境など、さまざまな問題に焦点を当てた研究があります。
宇野重規は東京大学の政治哲学者。保守主義・民主主義など、王道な政治思想に関する著書が多数。
児玉聡は京都大学の倫理学者で功利主義者。特に生命・医療倫理を専門とする。

個人的に面白かったのは
・憲法と哲学(長谷部恭男)
「憲法学の研究者が法哲学を勉強するとどういう御利益があるのか」

・法と倫理学(児玉聡)
「功利主義者ベンサムとピーターシンガーを引き合いに出して、法哲学と倫理学を素描する」

・法と政治哲学―「三つの分離」を超えて(宇野重規)
「法哲学と政治哲学」「英米系と大陸系」「規範研究と実証研究」の3つの分離についてまとめています。

・死と国家―政治的責務論の存在論的転回―(瀧川裕英)
「自然状態」や「ゲーム理論」を考察することから、国家の存在意義を立証します。
一番面白かった。思わず納得。

興味深かったのが、兵士の道徳的平等性に関する一考察(松元雅和)
今まで真剣には考えたことがなかった分野で、いろいろと新しい知的好奇心が芽生えました。
戦争の正しさから戦争に従事する兵士に責はあるのかといった再検討をします。

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