書評レビュー『法と正義のイコノロジー』美術から社会の「正義」を探る。

いろいろな美術作品からそれぞれの時代や社会でなにが悪であり「正義」であるとされていたのかを読み解きます

最終更新日:2018年3月15日

書名にある「イコノロジー」とは、図像を解釈する学問のことです。
美術作品に描かれたものから、その意味、さらには描かれた時代や場所の文化や社会を解明します。
本書「法と正義のイコノロジー」は、古今東西の美術作品を、法と正義の側面から解釈します。


「本書の目的は、正義の図像の中に隠された意味を読み取ることです。(中略)時空を超えた正義の普遍性と、(中略)時空に制約された正義の個別性を見る」(はしがき)。

法と正義のイコノロジー

私の評価:
★★★★☆
ページ数:
336頁
著者・編者:
森征一(慶應義塾大学常任理事)岩谷十郎(慶應義塾大学法学部教授・日本法制史)・ほか
出版社:
慶應義塾大学出版会
出版年:
1997年
出版社HP内書籍紹介:
慶應義塾大学出版会「法と正義のイコノロジー」
目次:
慶應義塾大学出版会「法と正義のイコノロジー 目次」
Amazon:
法と正義のイコノロジー (Keio UP選書)
価格:
2,808円

構成

まずは定番、中世ルネサンス絵画に描かれる「正義の女神」を題材としています。
女神はなぜ目隠しをしているのか?目隠しの意味は?

次に、ゴヤ、クリムトの絵画作品から正義を読み取ります。
その後、アジアに視点を移しインドネシアはバリのクルタ・ゴサ旧裁判所天井画を題材とし、 後に日本の幕末維新の正義を考察します。

最後に、最高裁判所の空間にある正義の図像を探ります。

レビュー

各章ごとに著者が異なるので、読みやすさの違いや、自分に合った章があると思います。

古今東西それぞれの社会で、「正義」をどのように考えていたのか。
どの章も、かなり詳細に調べたうえで書かれていることがわかります。

「第5章 クルタ・ゴサ旧裁判所天井画」の著者である太田達也はアジア法の専門家。
「第6章 幕末維新期の錦絵」の著者である日朝秀宜は日本近代史の専門です。
各章とも、著者の専門を活かした内容になっていると思います。

バリの天井画のところでは、日本の地獄絵との関係を考察。
バリのヒンドゥー文化の人たちは、善と悪や救済をどのように考えていたのか。
何を罪であるとしたのか。

この本を一冊読めば、文化の違いにより罪や正義の概念が異なるということが分かります。

学術的な勉強をしたり知識を得るためというよりは、読み物として読まれるのが良いかと思います。
ただ、気楽に読む読み物としては少し固く読みにくい章もあったので、★4つとしました。

慶應義塾三田図書館旧館 ステンドグラス

出版社も慶應で著者もほとんど慶應義塾の関係者だからなのか、慶應三田にある旧図書館のステンドグラスの言及もありました。
誰でも見られるので、是非見に行ってみてください(今は違うかも・・)。

追記:今年(平成28年)から3年間の予定で工事中で、閉鎖されていました。。


慶應義塾三田キャンパスの図書館旧館にあります。
福澤先生の銅像のすぐ近くです。

「Calamus Gladio Fortior」(ペンは剣よりも強し)
と最下部に書かれています。


※筆者撮影

「図は今、封建の門扉をパッと開いて旭日燦たる光とともに、泰西文明のシンボル女神が、塾章ペンを手にして入って来るところ、弓矢を持ったミリタリズムの表徴たる鎧武者が白馬を降りて迎えている。下方に叢生しているのは笹や茨棘で、今後泰西文明に依って開かれようとするカルチュアー少き荒野の様、女神の足下に飛立っているのは梟で、旭日の光から遁れて暗きに去るもの、凡で我国近代文明の暁を示す姿である」(301頁)(三田新聞昭和五・二・四)(慶應義塾図書館史 全文

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